NHKスペシャルで地下水についてやってましたね。Nスペはときどき地下水に関する特集をしますが、編成だか制作だかにこの方面に関心のある方がいるのでしょうか。
「地下水利用にも課税せよ」とはうちの教授の弁ですが、まあ水がタダだとか思ってる人間が多い限りは無理でしょうね。石油なんぞより地下水のほうがよっぽど危機の迫ってる地下資源だと思うのですが、日本のように水が豊富にある(ように見える)環境にあると、そんなことは想像がつかないのでしょう。
地下水だって雨が降れば補充されるんだから問題ないとか思いがちですが、地下水が帯水層という形で維持されるにはそれなりの水量がコンスタントに供給されなければなりません。そして大抵の場合、地下水の供給量は需要に比べて恐ろしく少ないのです。現在の乾燥地域にも地下水は存在しますが、それらはほぼ全て過去*1の遺産です。現在の供給量はゼロに近いのですから、先祖の財産を食いつぶしているも同然です。また河川も実は地下水の影響を大きく受けています。雨が斜面を下り、川に流れ込むというのは実態を正しく説明していません。雨は通常、その場で地面に浸透します。しかし時間当たりの浸透量には限度があり、それを越えたぶんが地表流として流れ下るに過ぎません。河川の水も、そのほとんどは一度地面に浸透した地下水が低地に達したことで地表へと流出したものです。
このシステムに基づいて考えてみると、実は熱帯におけるスコールのような雨は地下水供給にはあまり関与していないことがわかります。ほとんどは河川の増水などとして流れ出してしまうのですから。そうすると、一時的にでも増えた河川水を何とかして溜めておくことが水源確保として重要であることになります。今夜のNスペでも取材されていたように、ため池を作るというのはかなり有効な手段です。どこかの知事が脱ダム宣言なんてことを言いましたが、水源確保という観点から見るとダムを撤廃するのは必ずしも得策とはいえません。例え日本のような環境であっても、です。特に現在は山の荒廃が進んで水調節機能*2が低下していますから、河川水をそのまま利用すると言うのは安定性に欠けますし、地下水利用にシフトすると言うのも現在の水需要を考えると非現実的と言わざるを得ません。
地下水の問題について語るとき、アメリ中南部の大規模灌漑とセンターピボットが必ずと言っていいほど登場するわけですが、あれを初めて知るのは小学校の社会科の授業ではないでしょうか。たいていは日本の食料自給率と絡めて語られるわけですが、小学校の先生方には是非とも、乾燥地域においてそのような大規模農業が行われていることがいかに不自然であるか、その背景に何があるのかという点についてもお話していただきたいなあと思ったりします。


そうそう、もう1つ。クリーンエネルギーともてはやされる太陽光発電ですが、あの太陽電池のシリコン基盤を作るためには大量のきれいな水が必要で、しかも使用後の水は触媒で汚染されます。その水、いったいどこから持ってきてるんでしょうね?
環境問題は総合的に考えないと結局行き詰ると思うんですけどね。ま、あれこれ考えるばかりで無策なままなのが一番ダメなのも確かですが。

*1:気候が湿潤であった時代、たいていは氷河期

*2:水保持機能にあらず