昨日の記述で誤解を受けそうな部分があるので追記しておきます。
地下水は本来であれば持続可能な資源であるのは確かです。むしろ淡水資源のほとんどは地下水が占めていますし、水質・水温が安定していることや微生物による汚染があまりないことなどを考え合わせても優秀な水資源であり、地下水を有効利用していくことは水利用を考える上で重要と言えます。
しかし問題となるのは、地下水は非常にデリケートな水資源であるという点です。供給量を上回る汲み上げが行われれば地下水位の低下を招き、それが続けば土壌間隙の圧縮による地盤沈下が引き起こされますし、長期的には地下水流動系そのものが変化することで周辺の河川などの水位にも影響が波及します。また、地下水は地表面の熱に対する一種のヒートポンプとしても作用しているため、地下水の減少は地表面温度の調節機能を損なうことにも繋がります。
よって、地下水を水資源として有効利用するためには、一元的な管理が必要とされます。少なくとも一定量以上の汲み上げ、特に工業的な利用に関しては何らかの規制が行われるべきでしょう。こうした管理をどこが行うのかといえば、それはやはり行政が行うしかありません。
また、地下水の供給についても考えなくてはなりません。地下水が雨水の地面への浸透によって供給されることは昨日の文中でお話しましたが、地面が舗装されるなどして浸透率が低下すると、当然ながら地下水にとってはマイナスです。近年は郊外の都市化が進んだために本来の地下水供給源がその機能を十分に発揮できていない可能性があります。さらに、地下水質の汚染も問題となります。本来は前述の通り地下水の水質は非常に安定していますが、通り道に汚染源があればやはり汚染されます。地下水は非常にゆっくりした速度*1で流動するため、汚染が表面化するまでに長い年月がかかることもしばしばです。*2つまり汚染が明らかになった時にはもう手が付けられない事態になっている可能性が高いわけで、水質保全には地表水よりもはるかに注意を払わねばならないわけです。
高度成長期の過剰揚水から深刻な地盤沈下を招いた関東都市圏を中心に、地下水利用のガイドラインは徐々に整備されつつありますが、やはりもう少し突っ込んだ法的環境を整えて欲しいとも思います。


私らしくもなく、珍しく長々と語ってしまいました。地下水は地表水に比べてあまりに知られていないと思うので、たまにはいいでしょう。

*1:一般的には1年に1m以下

*2:茨城県神栖町での砒素汚染など